学生座談会

学生座談会の様子

筑波技術大学には聴覚に障害のある学生が学ぶ産業技術学部以外に、視覚に障害のある学生が学ぶ保健科学部があります。今回、両学部の学生七人が集まって座談会を開催しました。座談会では、講義のこと、寄宿舎での生活、サークル活動、将来のことなど、視覚と聴覚の障害の違いにもふれながら、障害を越えて活発な意見交換が行われました。当日は聴覚障害学生が聞きとれなかった内容を、視覚障害学生が携帯電話や情報端末に入力して見せたり、発話の苦手な聴覚障害学生を他の学生が助けるなど、聴覚と視覚の障害の違いを越えて活発な意見交換が行われました。

参加者
※参加者名は参加者全員が写っている上画像の左から順番になります
鹿子澤拳
産業技術学部 産業情報学科 情報科学専攻
湯浅友美子
産業技術学部 総合デザイン学科 視覚伝達デザイン学領域
山本健人
保健科学部 保健学科 鍼灸学専攻
河村春花
保健科学部 保健学科 理学療法学専攻
松尾政輝
保健科学部 情報システム学科
神谷翼
産業技術学部 産業情報学科 システム工学専攻
平井見奈
産業技術学部 産業情報学科 情報科学専攻

 

座談会 筑波技術大学の学生生活

─今日はお集まり頂きありがとうございます。最初に自己紹介から始めましょうか。みんな初めてだからね。
神谷 :

【手話で】私は産業情報学科システム工学専攻2年、神谷翼といいます。よろしくお願いします。 【座談会の間、主に鹿子澤君が神谷君の手話の読み上げと、他の学生の発言を手話にする担当をしました。 また、適宜筆談も用いられました。】

鹿子澤 :

僕は産業情報学科情報科学専攻3年の、難しい名前なんですけど、鹿の子供の澤と書いて、鹿子澤です。 名前はこぶしの拳(けん)です。

山本 :

「拳」の字がかっこいいですね。

神谷 :

なので、あだなが「カノケン」。

松尾 :

春日キャンパスの保健科学部情報システム学科、松尾政輝といいます。 松の木の「松」に尾っぽの「尾」、政治の「政」に「輝く」 と書きます。今、4年生で卒研に追われています。

一同 :

(笑)

山本 :

保健学科鍼灸学専攻の山本健人です。 健康の「健」に「人」です。僕も鹿子澤君と同じ3年生ですけど、卒論が忙しくなってきて、 さっきまで打ち合わせをしていました。 よろしくお願いします。

河村 :

保健学科理学療法学専攻2年の河村春花です。 さんずいの「河」です。よろしくお願いします。

湯浅 :

【手話を出しながら】湯浅友美子といいます。 お湯の「湯」に「浅い」です。総合デザイン学科の視覚伝達デザイン学領域です。

松尾 :

【湯浅さんの声を聞いて】湯浅さん、何回かうち(情報システム学科)の教室に来たことありますか?

湯浅 :

授業で行きました。

松尾 :

やっぱり~。

河村 :

何年生ですか?

湯浅 :

3年生です。よろしくお願いします。

平井 :

私は産業情報学科情報科学専攻2年、平井見奈です。普通の「平井」に「見る」に奈良の「奈」です。

─それでは、この大学や学科、専攻を選んだ理由を教えてください。
松尾 :

僕はもともとコンピュータゲームやテレビゲームが好きで、 中学生の頃からゲームを作りながらプログラムを勉強していました。 でも自分で調べていたのでは限界があると思って、 それで大学で情報処理を基礎から勉強したいと思うようになり、入学しました。

鹿子澤 :

じゃ、きっかけは中学の頃からなんだね。

学生座談会の様子
一同 :

すごいね~。

平井 :

もともと見えてなかったの?

松尾 :

2才から見えていません。画面見えないと遊べないじゃないですか、ゲームって。 じゃ、見えなくてもできるものを作ればいいかなって。

鹿子澤 :

この前テレビ※に出たときの、音でできるゲームだ。

松尾 :

そうそう。

鹿子澤 :

僕らも課題でゲーム作るよ。

平井 :

やるよね。

鹿子澤 :

3D画像を作ることを勉強したと思ったら、いきなりハイッみたいな感じでゲーム作成の課題が出る。

松尾 :

すごい、レベル高い~。ぼくら3Dは使ったことないですよ。

鹿子澤 :

プログラムの勉強ってどんなふうにやったの?本とか?

松尾 :

僕は墨字の本は読めないので、主にインターネットで調べています。えーっと、次は誰が言います?

湯浅 :

では私が。私は絵を描くのが好きだったけど、デザインがどういうものか分かりませんでした。学科やコースを選ぶよりも先に情報保障について調べて、技大にたどり着きました。この大学なら思い切り勉強できると思って、高校一年の時にこの大学に決めました。今は視覚伝達デザインについて勉強しています。

河村 :

ウェブデザインとかですか?

湯浅 :

はい。

河村 :

すごい。

湯浅 :

アドビのソフトを使って勉強しています。できればウェブ関係の仕事につきたいと思っています。

松尾 :

デザインではどんな時が一番楽しいですか?

湯浅 :

出された課題で、出された内容以上にいい作品を出せた時。デザインというのは問題点があるところから、より良いものにかえることがあると思ってて、頼まれた内容以上のものを出せたときに達成感があります。

一同 :

おお、なるほど~。

鹿子澤 :

じゃあ次、僕が。入学した理由はパソコン関係のことが大好きだったから。小学校の頃、自分の趣味でホームページを作ってて…。自分ではまぁまぁソフトのセンスがあると思うので、もっと磨きたいなと思って。あとは、湯浅さんがいったように情報保障。授業についていけないのは辛いと思ったのでこの大学に入りました。

学生座談会の様子
山本 :

分かりやすい理由ですね。

松尾 :

どんなソフトが得意なの?

鹿子澤 :

一番得意なのはパワーポイント。

松尾 :

僕は見えないからパワーポイント苦手ですよ。図とか入れられないので箇条書きしかしません。

鹿子澤 :

ゲーム風のパワーポイントファイルを作ったりするよ。

山本 :

パワポでゲーム作れるの?

鹿子澤 :

例えばクイズとか。学園祭の時のクイズも400枚ぐらいのパワポで作ったよ。 次、山本君の理由は?

山本 :

元々は、地元の大学の物理学科を考えていたけど、段々と目が悪くなったこともあって、この大学に入りました。

松尾 :

入学して良かったことは?

山本 :

この大学に来て初めて自分と同じ障害を持った人たちと出会えたことが一番ですね。高校までは晴眼者に囲まれて生活していましたから。次、平井さんはどうですか?

平井 :

私は中学の時はドッグトレーナーになりたいと思っていた。技大には何となく入った(笑)。でも高校の時と比べて視野が広がるし、聾についての講義もあるし。高校の時は進路決められなかったけど、今は自分で進路を考えられるので良かったと思う。

松尾 :

技大の影響力すごいじゃないですか(笑)。河村さんは?

河村 :

私は高校を卒業してから盲学校に入って、あんま・マッサージの資格を取りました。医療の勉強をするのが楽しくて、その中でもリハビリに興味が沸いてきたんですね。それであんま・マッサージとリハビリを併用した理学療法士になりたいと思って、盲学校の先生の勧めもあったのでここに来ました。

鹿子澤 :

次、神谷君の理由は?

神谷 :

私は小さい頃から電車や新幹線、特に新幹線の尖っている形が好きで、空気抵抗に興味があって流体力学を学びたいと思って。それに技大は先生が手話を使ってくれる ので。学びやすい環境だから選びました。

鹿子澤 :

理由がかっこいいね(笑)。彼は鉄道オタクで、いろんな駅名を覚えてる。

神谷 :

でも駅名よりも車両が好き。

一同 :

─これまで受けてきた情報保障や本学の授業での支援について思うことを聞かせてください。
湯浅 :

リアルタイム字幕は大学に入ってからですね。聾学校の時は校外から来た先生の時は校内の先生が手話通訳。パソコンでの字幕も見たことはあったけど、使う時は大きな会議とか授業のときだけ。元々学生の数が少なくて2、3人だけ、校内の先生は手話ができるので、基本的に手話でした。

神谷 :

僕は幼稚部からずっと聾学校に通ってた。先生はみんな手話を使ってて、困ったことはなかった。技大に入っても変りはなかったから違和感もなかった。でも聾学校ではリアルタイム字幕はなかったから新たな発見だった。

湯浅 :

私と同じですね。大学院の情報アクセシビリティで(情報保障について)研究されているみたい。

松尾 :

じゃあ次はこっち(保健科学部)の話をします。僕は小学校からずっと盲学校で情報保障もしっかりしていたからあまり苦労はしていません。大学に入ってからはパソコンとかの設備やソフトが新しいのが良いですね。古いスクリーンリーダーだと読まない場所があったりして不便なので。新しい設備やソフトのおかげで、パソコン使って勉強しようと思ったときに不自由することは、この学校に来てほとんど無くなりました。

平井 :

本とかは読みますか?

松尾 :

点字の本を読みます。それと教室のパソコンには点字ディスプレイっていうのが付いていて、それがあるから音声だけじゃなくて点字でもファイルが読めます。

学生座談会の様子
鹿子澤 :

それは点字がボコッて出てくるの? つまようじがにゅって出る感じ?

松尾 :

それに近いですね。

鹿子澤 :

持ち運びできるの?

松尾 :

はい、そういうのもありますよ。学科で貸してくれたりします。

鹿子澤 :

【産業技術学部の学生たちに向かって】聴覚障害で持ち運べて便利って何かな? 例えばM-リンクっていう、耳にかけると磁気で補聴器に直接音が入ってくるものがある。これは確実に音漏れしないし音も大きいし便利。他に今の時代だから言えるのは、スマートフォン? スマートフォンは万能だよね。話してわからない時は入力してもらえるし、今はノートアプリもあるし。

松尾 :

スマホは僕も使いますよ。【取り出して皆に見せる】

鹿子澤 :

画面ついてないけど、触ると音がするんだって。【産業技術学部の学生に手話を交えて説明】

松尾 :

これは最初から入っている機能です。僕みたいに見えない人は、画面のどこに何があるかわからないから、1回タップするとそこに何があるか教えてくれて、2回タップすると実行されるようになってます。

山本 :

河村さんは授業とか支援とかどう?

河村 :

私は高校まで一般校で、自分が障害者だって友達に言っていなかったんです。だから暗い時も誰にも助けてって言えなくて、よく転んだりしてたなぁ。盲学校に行ってか らは周りの人が助けてくれましたね。技大に来て良いと感じるのは、授業の資料を一人一人に合った文字の大きさにしてくれるところかな。

鹿子澤 :

いいな。僕もやってもらおうかな(笑)。

山本 :

僕の場合は全校生徒1000人くらいの高校に通ってましたが、一番前の真ん中の席にしてもらうとか、たまに拡大コピーの資料をもらうとか、それぐらいで…。そこから技大に来て世界がガラッと変わっちゃいました。最初は慣れなくて。初めて大きな文字の資料を見たとき、「でかっ!」って思いました。大きすぎて、見易いんだけど読みにくくて(笑)。未だに慣れてないところもありますが、色々なところで視覚障害に対する配慮がなされているのをすごく感じます。例えば体育館の壁が柔らかかったり、点字ブロックが 光っていたり。いたるところに点字ブロックがあるのだけでびっくりします。

松尾 :

盲学校出身者は点字ブロックについては当然のように感じるけど、一般校から来るとまた感じ方が違うんですね。

河村 :

光る点字ブロックは夜歩くときに助かりますよね。

山本 :

とにかく僕にとっては驚くことばかりでした。

─将来、どんな仕事をしたいと思いますか?それに向かって今はどんな勉強をしていますか?
松尾 :

IT関係の企業に入りたいという気持があります。また今はパソコン関係やプログラミング、ネットワークなどについて幅広く教えてもらっているので、卒業後は大学院に 進学して、もっと深く勉強してから就職したいです。具体的な計画はありませんが、自分で何かを作るのが好きなので、それが生かせる仕事がしたいです。

山本 :

僕はもともと物理のほうに進みたかったんですけど、最近ようやく鍼灸に興味が出てきました。その理由っていうのは、病院実習で、患者さんが鍼灸を受けて治療効果が出ているのを実際に見て、鍼灸の奥深さを感じたからです。実は鍼灸はどういった基準で効果が出ているかはっきりと解っていないんですが、実際に効果が出ているのを目の当たりにして興味が出てきました。やっと自分も鍼灸一本でやっていこうと最近決めまして、卒論も早めに始めています。将来は研究者になりたいです。今、学会にも参加していて、いろいろ活動しています。

松尾 :

進学するの?

山本 :

他大学の大学院博士課程まで進学するつもりです。

河村 :

私は今、リハビリの勉強をしていて、この前夏休みに病院の実習に行って理学療法士さんの仕事を見たんですけど、めっちゃかっこよくて。絶対なりたいと思いました。 できれば大きな病院で働きたいなって思っています。湯浅さんは?

湯浅 :

今、デザインの勉強しているし、将来はデザインの仕事につきたいです。デザインは情報を分かり易く伝える必要があって、聴覚障害関係は目で見て情報を取っていることが多いので、ぱっと見て情報が伝えられるように、将来、デザイン関係の会社に入って、役に立てればいいなと思ってます。

平井 :

私は普段はプログラミングの勉強をしていますけど、正直なところ向いてないかもしれないと思っています。ただ、教職課程は楽しいです。この大学は中学、高校しか免許とれないので、できれば小学校で教えてみたいとも思ってます。で、大学院行って小学校の先生の免許をとるのもいいなって思って、今、大学院を考えている。他の先生も、君には先生がいいんじゃない?と言われるときもある。企業が良いんじゃないっていう人もいる。バイトしている時に接客をしたいなって感じる時もある。でも、まだ何をやりたいかってはっきり決まっていないので、可能性を広げていきたいなって思っています。

神谷 :

私はさっき言ったように新幹線が大好きです。最高320キロ出ます。それ以上出せるけど、日本に法律があって、騒音基準があってそれ以上出せない。新幹線の騒音のほとんどはパンタグラフ。そこに空気がぶつかって、騒音の原因になる。形を工夫しないといけない。そういうことを考える仕事をしたい。

鹿子澤 :

高校の時までは、学校の先生になる目標があった。でも子供に関わることが好きなだけなので、それを仕事にすると後でちがうと思うかなと思った。それで高校の時すごく進路に迷って。技大に来たのは得意なことを仕事にするといいと思ったから。今、技大のウェブの講義を受けていてすごく楽しい。だから1つ目としてウェブデザイナーをしたい。

湯浅 :

うんうん。

鹿子澤 :

それからインターンシップで、人事部とかIT部門とか体験したけど、マーケティングにいちばん興味があった。どうしたら売れるのか考えるのが楽しかった。だから2つ目はマーケティング。もうひとつは、ダンス関係。ワイルドザッパーズっていうアメリカの聾のダンスの団体となにか舞台をやりたい。この前、近畿大学とダンスをコラボした。自分で言うのも何だけど、自分が輝いていたと思う(笑)。この3つですね。

湯浅 :

私も鹿子澤君と同じダンスサークルです。ダンスは障害と関係なく自分を表現できることの一つだと思う。

─サークルの話が出たところで、大学生活で楽しいことについて聞かせて下さい。
学生座談会の様子
湯浅 :

自分は聾学校だったから、大学に入ってから友達が増えました。全国からいろんな学生が集っていて、勉強やサークルなど、共通点が同じ友達もいます。

平井 :

ライバルがいるってことが嬉しいよね(笑)。

湯浅 :

うんうん。確かに。

鹿子澤 :

大学で楽しいこと…ダンス。寝ること(笑)。スノーボード。アルバイト。たぶん今一番楽しいのはバイト。お客さんと関わるのが楽しい。

河村 :

何時から何時までやってるの?

鹿子澤 :

夜10時から朝6時まで。そのあとすぐ、講義。

湯浅 :

スノボは私もやってる。去年は5回くらい行った?

鹿子澤 :

湯浅さんは3回4回ぐらいだっけ?(僕は)10回くらい行ったよ。

松尾 :

僕は楽しいことってゲームの話になっちゃう(笑)。一人で黙々とやるのではなくて、何人かで一緒に作業します。インターネット経由で2、30人集まったり。さっきから電車とかダンスの話題が出ていますが、実は今、電車のゲームを作ってて、販売することも計画しています。あとダンスゲームも作ってますよ。何か作ると、楽しかったとかここを直したほうがいいとか、必ず反応が返ってきます。そんな感じで盛り上がって、いいものをどんどん出していけるってうのが、今やっていて一番楽しいことですね。

平井 :

自分は今学生会副会長を楽しくやっています。今までに無い企画を考えたり、ボーリング大会やったり、先生と食事会をしたり。そのときに得られる達成感も嬉しいし、みんなが喜んでくれると自分も嬉しいじゃないですか。すごい楽しみながらやっています。来年もやりたいなーと思って。次は、自動販売機をコミュニケーションホールに置きたい。コミュニケーション広場なのに誰もコミュニケーションしてるとこ見たことない。だからそこに自動販売機あったらジュース買ってその辺に座って、自然にコミュニケーションができるかなって。そんな感じでいろいろ考えています。

河村 :

私の場合は朝1限が無い時間が一番幸せ(笑)。

神谷 :

僕は新幹線を見ることが一番楽しい(笑)。それと野球部に入っている。先輩がすごくうまいので、全国大会にも行けた。優勝はできなかったけど、今のチームは良いチームだと思う。勉強も部活も目標に向かっている今が楽しい。

河村 :

青春ですね(笑)。

山本 :

僕が今一番楽しいのは友達と一緒にいることですかね。今まで見える人たちと一緒だったから、なかなか自分のことを打ち明けられる友達とか、障害のことを話せる友達ができなかった。今やっとそういう友達ができたので、彼らと一緒に議論したりしているのが楽しいです。

一同 :

いい話~(笑)。

─学生寄宿舎やアパートでの一人暮らしの大変さや楽しさを聞かせてください。
鹿子澤 :

春日も天久保も教室に近いというのは寮暮らしで良いところだと思う。

湯浅 :

私の場合は料理が好きなので、自炊して料理の種類が増えていくのが楽しい。ほとんど自炊してて今日の料理を考えるのも楽しい。めんどうな時もあるけど(笑)。

神谷 :

僕は料理しない。ご飯炊いて何かの素を入れて終り。おかずはない(笑)。

松尾 :

僕は今年の11月から寮を出てアパート暮らしをしています。好きな時に起きてやりたいことやれるのがいいですね。大学の近くで歩いて5分で教室に着くから寄宿舎に居た時と変わらないです。

平井 :

逆に近いのがストレスだったことがある。一年の時は近すぎて大学そのものが大きな鳥かごみたいで自分は何やってるんだろうとおもっていた時期もあった。その時はできるだけ外部との接触を増やそうとがんばってた。

湯浅 :

設備は良いと思う。例えば起きるときに振動のある目覚ましなど、今までは親に起こしてもらってたけど、一人暮らしで困らないようになってる。

鹿子澤 :

結構大きく振動するよね(笑)。僕は中学校は秋田。秋田出身なんだけど実家通い。高校は千葉。だから寮暮らしだから、体内時計が身についている。

学生座談会の様子
平井 :

朝早く起きなくていいのがうれしい。高校の時は5時起きなので、朝出たら星がみえた。

鹿子澤 :

僕も5:30起きだった。距離的には1時間で行ける距離なんだけど、秋田の田舎なので電車が少ない。

神谷 :

起きるのが大変なのは確かだけど、景色を楽しみながら歩くことができた。今は、寮暮らしなのでそれがない。

平井 :

実家に帰って安心することないですか?

山本 :

それは確かにあるよね。離れているからこその「帰った時の安心感」。

松尾 :

寝てても起きたらごはんがあるのが素晴らしい(笑)。

鹿子澤 :

美味しいよね実家のご飯。実家は床暖なので、寮が寒い(笑)。

平井 :

卒業したら実家の近くに帰りたいですか?

山本 :

実家から離れたいというのがここに来た理由の1つだから、僕は一人暮らしを続けたいです。

鹿子澤 :

地方だと仕事が少ないと思う。

湯浅 :

私も同じ。関東の方が仕事が多いというイメージがある。

─休日の過ごし方などを教えてください。
鹿子澤 :

イベントが近いとダンスの練習入れてダンスの練習。僕バレー部にも入っているのでバレーの練習。

神谷 :

僕も毎週土曜日野球の練習がある。他の空いた時間は課題をやってる。時々東京に行ってごはん食べたり。

平井 :

バイトがあったらバイト。基本何か予定が入ってて、遠くの友達と会うことが多い。湯浅 私も休日は友達と出かけることが多いです。映像を見るのが好きなので、何もないときは、部屋にこもってテレビやDVDを借りて見てます。

松尾 :

ずっとプログラム書いていることも多いです。出かける時は友達と食事とか、コーヒーを買いに行ったり。

平井 :

それだけ聞くと幸せな人ですね(笑)。

松尾 :

学校の課題のプログラムは大変だと思うことも多いけど、やりたいことを実現するのは楽しいです。自分の目標に向かって物を作るのが楽しい。

山本 :

僕は高校生の頃からずっとバンドをやってて、主にドラムを叩いてました。あとピアノも小さいときから弾いてて、今は寄宿舎の部屋に電子ピアノがあるので休日はピアノ弾いてます。

河村 :

私の休日は基本バイトづくし(笑)。たまに自由な日は、買い物が好きなのでイーアスとかセンターとかに遊びに行ってます。

─最後に、この大学を目指す高校生たちに対してのメッセージを一人ずつお願いします。
平井 :

この大学に入って自分がこういうことやりたいと考えられるようになったことが一番良かった。今、進路に迷っているなら大学に入りなって思う。

湯浅 :

まず友達を作るのが大事。勉強でもサークルでも、一緒に過ごせる友達が周りに沢山いるというのはこの大学の良いところだと思う

河村 :

不得意科目の勉強は大変だけど、興味のある勉強は楽しい。視覚障害への配慮も十分あるので、理学療法士になるならこの大学を選ぶのがいいと思います。

山本 :

僕は一般校で勉強している皆さんに。一般校にいると障害者扱いをされたり情報保障を受けたりすることに抵抗があるかもしれない。でも技大に入ってみて思うのは、他の障害者と関りを持つと視野が広がってとてもいい経験になるということ。勉強する環境も整っているから効率がいいし、将来のことを考えても、この大学に入ることはプラスになると思います。

松尾 :

じゃあ僕は特別支援学校や盲学校から来る人に向けて。盲学校にいると自分の学校以外の世界が分からなくて、進学の時期になってどんな勉強するんだろう? 一人暮らしどうしよう? とか不安になることがあります。でも入ってみると大丈夫。どんなことでもできると思います。僕は情報システム学科についてしか言えませんが、幅広くいろいろな分野のことを教えてもらえるので、その中から好きなことを見つけて、とことんそれに注力するといいと思います。機器の貸し出しもあるし、授業も配慮されているから不便なことはないと思う。とにかく周囲を巻き込んで好きなことをとことんやればいいと思います。鹿子澤 技大に入る前に、今一度自分が何をしたいのか、何を学びたいかはっきりさせておくべきだと思う…と言いたいところなんですが、別に何を学びたいというのがなくても、平井さんが言うように思いきって大学に入ってみると、学生生活の中で貴重な経験もできると思う。後からいろいろ芽生えてくることもあると思います。何かを学びたいという目的があって入るのもいいと思うけど、技大に入って何かを見付けたいと思って入るのもいいと思う。

神谷 :

高校と違って大学は自分の時間が沢山持てる。その時間を使って、学生時代しかできないことをいっぱいするといいと思う。自分を変えたり、自分を見直す時間が持てると思う。

一同 :

うんうん。

─本日は長時間、ありがとうございました。
※2015年10月28日放送「探検バクモン(NHK総合)」のこと。本学を紹介する回「見えない 聞こえない でもね...」で、松尾君の作った視覚障害者と晴眼者が共に遊べるゲームが紹介されました。