学長あいさつ
筑波技術大学は聴覚障害者、視覚障害者のための高等教育機関として1987 年に三年制短期大学として設立され、2005年に四年制大学となり現在に至っております。教育に関しては、少人数教育の下、多様な発達的特性の学生の実態に即した学修者本位の教育が、授業だけでなく学生生活の様々な場面で展開されています。
近年、大学に進学する障害者の数は増加の一途を辿っており、障害学生が学ぶ高等教育機関では合理的配慮を具現化する方策が検討、実施されるようになってきました。このような社会的変化の中で、筑波技術大学の教育における強みは何か。それは、他大学が障害学生の学修、学生生活における活動参加上の不利益を補うことを、いわゆる障害学生支援と位置づけているのに対して、筑波技術大学は障害を補償するだけではなく、学生の潜在能力を顕在化させ、知の基盤となる情報を意図的に付加するといった“教育的支援”を行っているということです。聴覚や視覚に障害がある学生に情報を確実に伝達する、情報を知識として吸収し多分野の知識を統合する、そして知識を知恵に昇華させていくという、教育の本質的役割あるいは機能を、筑波技術大学では特に意識して実践しています。この実践を通して培われた知見は、本学の研究を通して社会に公開されており、また本学が中核となって行っている他大学の障害学生支援に役立てられています。
2019 年度から開始する社会人障害者を対象としたリカレント講座では、従前の卒業生対象講座で得られたノウハウを基に、学校卒業後の障害者全般の生涯学習のニーズに応えていくとともに、高大連携事業及び企業等と連携した事業をいっそう充実させることで、理念にとどまらない実質的なインクルーシブ社会の実現に貢献していきます。
国立大学法人筑波技術大学 第4代学長 石原 保志